イラスト微細加工のハードル

今作ってる金剛型シルバーリングについて、ちょっとした解説と愚痴を。

基本的にAg950銀板に線でイラストを彫り込んだ物です。

単に板に線いれただけじゃんって感あるんですが、こういう微細線彫り込みってすんごい面倒なんです。

こういう板にラインを入れる方法としては、いくつかありますが、大きく分けると

1. ワックスを削って原型作って鋳造

2. ワックスに限らず樹脂等で原型を作ってゴム型作ってインジェクションワックス複製

3. 直接材料を加工して製作

うちで作っている銀細工のほとんどが2.の工程を経ています。


1.のワックスを削って原型作って鋳造なんですが、微細線の品は、鋳造不可能とまでは言いませんが、かなり困難な形状の一つになります。

ワックスを石膏で包んで焼いてワックスを焼却して石膏鋳型を作って、溶かした銀を流し込むのですが、流れる勢いで石膏が吹き飛びます。


なら、銀を流し込む勢いを低減すればいいんじゃね?ってなるんですが、したら今度は流れ込み不良の問題が発生します。


鋳造方法には大きく分けて

・グラビティ(自重)鋳造

・遠心鋳造

・真空鋳造

・加圧圧迫鋳造

があります。

いずれも銀が鋳型の隅々に入るように銀の流し込みをアシストしています。

グラビティが最も銀の流速が低くなる鋳造法なのですが、それを行っている業者さんに外注しても失敗しました。


2.樹脂等で原型作ってゴム型作ってインジェクションワックス複製ですが、まずインジェクションワックス複製が微細線の複製にあまり適していません。

ゴム型にワックスを圧入して流すのですが、圧入という工程上、空気の逃げ場がない部分が流れません。複製取れても今度は先述の鋳造の課題が残ります。


と、なると、3.直接材料を加工して製作、になるのですが、

この場合作り方は大きく分けると

1. 鏨で頑張って手彫り

2. エンドミルで機械加工

3. エッチング

4. レーザー加工

1.は単品オーダー品ならまだしも、生産性を考えると論外です。
そもそも0.1mmの金属加工用の鏨って自分は聞いたことがありません。
模型用であればスジボリ堂のBMCタガネがあり、自分も原型制作で使っていますが、あれはカンナ掛けの要領で溝を少しずつ彫っていく使い方で、金属にハンマーで打ち付けて溝を切る用途ではありません。

自分は試しにやってみて先端が欠けました。


4.は金属加工用のレーザーとなるとファイバーレーザー加工機が必要ですが、個人向け卓上の加工機はまだリリースされていません。気化した金属の排気設備等、健康被害も懸念されます。


んじゃ、3.エッチングはどうかというと、まず銀そのものを腐食させるとなると、詳細は省きますが結構な劇薬が必要になります。銅とかならホームセンターで腐食液が手に入りますが、銅板エッチングして複製となると、複製自体が困難なのは前述の通りです。

腐食液の廃棄方法も問題になります。

また、エッチングだと腐食させたい部位を除いてマスキングさせないといけないのですが、これも専用機材が必要になります。F式なら出来ないこともないのですが、トナー印刷の精度的に、0.1mm幅の線を残して真っ黒印刷ってのが出来るかというと、ほぼ無理です。F式についてはググって下さい。


となると、残るは2.エンドミルで機械加工という方法になります。

自前の機材の性能的に時間がかかるのと、刃物の消耗を考えないといけませんので、結構コストはかかりますが、これでなんとか仕上げられているのが実状です。


てなわけで、単に線を彫ってるだけって思われがちなんですが、技術的困難性が高い造形なんですね。

線幅が太ければ難易度は一気に下がるんですけど、幅4mmの材料に0.1mmの線幅で金属へイラスト加工ってのは個人としてはかなり大変な技術使ってます。
線幅が0.3mm以上稼げるのであれば、複製も可能な領域に入ってきますので、別材料で原型作って複製や、エッチングも視野に入ってきます。


なので、 金剛型シルバーリング、キャラクターズフェスタ神戸1、ホビーラウンド22で販売しますので、よろしくお願いします。

リングなので、サイズの問題出てくるんですが、今回は15号固定で作成しています。

サイズ合わないけど欲しいという方には、別途お預かりしてサイズ調整か、50cmの真鍮チェーンを付属しますので、首から下げても良いと思います。

機材はいつものオリジナルマインド社製Qt100にOSG製エンドミルを使っています。

楽RAKU銀工房

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